【ParasiteNOVA】第三話『目覚め』

この作品は作者はやまおう。の著作物です。
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              ●比率 5:4:1or4:2:1

                 登場人物

  • ブルーグ・ナハトイェガー(♂):28歳。やや根暗。
  • イクス・アロンソ(♂):28歳。チャラい。
  • ソクラ(♀):恐らく20代半ば~後半。無感情でどことなく威圧的。
  • アネッタ・ウィリアム(♀):33歳。キャリアウーマン。
  • ブライアン・ルーソン(♂):22歳。ヒス男。
  • 川崎博士(♂):53歳。穏やかで寂れた中年男性。
  • ナレーション(不問)

 ※以下、被りでも大丈夫なキャラ

  • ジェイク・バスクード(♂):余裕たっぷりだが、負けず嫌い。

                (ブライアンとの被り推奨)

  • メアリー(♀):9歳。

          (ソクラorアネッタとの被り推奨)

  • ミランダ(♀):年齢不詳(ブルーグよりは上)。セクシー。

          (ソクラorアネッタとの被り推奨)

 

 

※詳しい説明はこちらへ→登場人物詳細

 

                  役表

 

10人用

【ParasiteNOVA】第三話『目覚め』

ブルーグ♂:     
イクス♂:    
ソクラ♀:   
アネッタ♀:     
ブライアン♂:    
川崎♂:    
ナレ♂♀:   
ジェイク♂:
メアリー♀:
ミランダ♀:

http://urx.nu/aoJz

7人用

【ParasiteNOVA】第三話『目覚め』

ブルーグ♂:     
イクス♂:    
ソクラ&♀:   
アネッタ&♀:     
ブライアン&ジェイク♂:    
川崎♂:    
ナレ♂♀:   

http://urx.nu/aoJz

                  本編


                                      【あらすじ?】

イクス:「うおぉぉぉぉ!!」

ブルーグ:「どうした?イクス。」

イクス:「どうしたもこうしたもあるかよ!
     あー…ホント、どうしたらいいんだ?」

ブルーグ:「あぁ、前回壊した遺跡の事か…。」

イクス:「やっぱ減給かぁ?謹慎かぁ?」

ソクラ:「それだけで済めばいいけどな。」

イクス:「え…?ヤダ、ヤメてー?
     そういう事言うとオジさん、泣きそうだから。」

アネッタ:「それに加えて、ブルーグ?」

ブルーグ:「ん?」

アネッタ:「貴方に至っては未成年者略取じゃない。」

ブルーグ:「どうしてそうなった?!」


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ナレ:ディーパ合衆国、首都セントラル・ディーパ。
   政府機関関連のビルが立ち並ぶ中に、
   ディーパ軍、総合施設ビルはあった。

   ブルーグ達の所属する『WPC』の総本部もまた、
   この近代的で無機質な建物の中にある。

   『WPC』はディーパを中心にサルス、
   ノートルゲートに支部があり、
   各国共に、一部の人間にしか、その存在が知られていない。
   パラサイトの存在然り、彼らの存在も、
   多くの人間に知られてはいけない、機密事項であった。



アネッタ:「…それじゃ、ここにサインを。」

ブライアン:「ブライアン・ルーソン…っと。
       はい、これで大丈夫でしょうか?」

アネッタ:「えぇ、確かに。」


ナレ:ブライアンから書類を受け取ると、
   満足した様子で、眼鏡の女が頷く。
   女はそれをバインダーに挟むと、
   柔らかな口調で、話しかける。


アネッタ:「ドクター川崎の助手なのに、
      こんな堅苦しい書面にサインをさせて悪かったわ。」

ブライアン:「あ…いいえ!当然のことです!
       僕は一応、『まだ』民間人ですから。」

アネッタ:「『まだ』…って、あぁ!そう。
      とうとう本部勤務になるのね?」

ブライアン:「川崎先生には、小さい頃から本当に良くしていただいて。
       幼くして父を亡くした僕を気遣ってくれていたので、
       大人になったら、

       少しでも先生の役に立ちたいと思っていました。」

アネッタ:「確か…ドクター川崎の大学時代の友人、 

      だったわね?お父様は。」

ブライアン:「はい!」

アネッタ:「ルーソン…。」


ナレ:女は、受け取った書類に書かれたサインを指でなぞった。


ブライアン:「ウィリアム副総帥?」

アネッタ:「…え?…えぇ、なんでもないわ。
      遺跡の調査は、今後予定にはないけど大丈夫なの?」

ブライアン:「その事なんですが、
       今後は先生の研究全般のお手伝いをする事になりました。
       専門の考古学以外の事も。」

アネッタ:「あら…若いのに、茨の道を選ぶのね?」

ブライアン:「尊敬している川崎先生の、
       教えを請う事が出来るなら、本望ですよ。
       それじゃ、研究室の片付けが残っているので、これで。」

アネッタ:「えぇ、今後ともよろしくね。」


ナレ:ブライアンはニッコリと微笑むと、
   研究室棟の方へと歩いて行った。

   腰に携えた通信機に反応がある。


アネッタ:「こちらアネッタ。
      あ、総帥!…えぇ、これから向かうところです。
      …その事なら、心配には及びません。
      問題になる以前に処理しておきましたから。
      …では、後ほど。」


ナレ:一方、その頃―。

   ディーパの摩天楼を一望できる窓をバックに、
   一人のスーツの男が、ゆったりと大きな椅子に座っている。
   机に置かれたネームプレートには、
   『ジェイク・バスクード総帥』と書かれていた。

   その前で、この世の終わりの様な表情を浮かべ、
   大きく項垂れているイクス。


ジェイク:「先の任務、ご苦労だった。
      歴史的大発見を崩壊させた罪は重いぞ、イクス。」

イクス:「う…っ。」

ジェイク:「本来なら懲戒免職ものだが…。
      過去の遺物と、現状の危機を打破する為の人材。
      我々にとって必要なものは後者のほうだ。」

イクス:「それじゃっ…!」

ジェイク:「今回の件については、1ヶ月の謹慎処分で済ましてやろう。」

イクス:「うげっ…それでも謹慎かよ…。しかも一ヶ月…。」


ナレ:イクスは更に大きく項垂れた。
   その背後、扉の開閉音と共に
   ハイヒールの足音が、こちらへと向かってくる。


アネッタ:「それでも激甘よ?感謝して欲しいくらいだわ。
      私が根回ししなかったら、どうなっていた事か…。」

ブルーグ:「アネッ…(咳払い)副総帥の言う通りだ。
      大人しく家でのんびりすることだな。」
イクス:「うぐ…わ、わーったよ…。」

ブルーグ:「WPC。いや、ディーパ全体の信頼を落としたんだぞ?
      処刑されてもいいくらいだ。」

イクス:「そ、そんなぁ!」


ナレ:ブルーグの言葉に半泣きになるイクス。
   再び開閉音がすると共に、
   今度は東洋系の、白衣の中年男性が入ってくる。


川崎:「まぁまぁ、そこまで責任を感じなくてもいいですよ。」

ソクラ:「…ドクター。」

川崎:「イクス、君は世界の脅威を消してくれた。
    …私の罪をひとつ、消してくれたんだ。」


ナレ:消え入りそうな男性の言葉を、
   ブルーグは違和感を覚えながら聞いた。


川崎:「総帥。
    ここは私に免じて、彼の謹慎を緩めてはくれませんか?」

ジェイク:「しかし…」

川崎:「1ヶ月もの間、WPCのメンバーが2人では活動も困難でしょう。
    それに、遺跡発掘の指揮者である、張本人が良いと言ってるんです。」

アネッタ:「それは総帥も理解してます。ですが…。」

ソクラ:「つけ上がるだけだ。」


ナレ:ソクラの言葉に、少し考えた表情を浮かべ、
   何かを思いつくと、男性は再び口を開く。


川崎:「では、どうでしょう。
    彼に私の論文の手伝いをさせてみては。」

イクス:「博士の論文だぁ!?じょ、冗談じゃねぇよ!」


ナレ:慌てふためくイクス。
   その反応を楽しむように、意地悪な表情を浮かべる面々。


ジェイク:「それはいいアイディアだ。
      それなら、謹慎処分は無しでもいい。」

ソクラ:「ドクターの論文か。
     脳タリンのイクスからすれば、どんな刑よりも重い。」

ブルーグ:「よかったなぁ、イクス。
      暇を持て余すことはなさそうだぞ?」

イクス:「お前ら全員鬼だ!」


ナレ:楽しげな余韻に浸りつつ、
   WPC総帥、ジェイク・バスクードは話題を切り替える。


ジェイク:「ところで川崎博士。
      ここへ来たのは、こんな話をする為じゃないだろう?」

川崎:「ご明察ですね。
    実はブルーグ達が連れ帰ってきた
    少女の精密検査を行なったのですが・・・。」

ブルーグ:「メアリーの事か。」

川崎:「メアリーと言いましたか、あの少女は。
    実はですね…不思議な事に侵食されていなかったんです。」


ナレ:博士の言葉に、一同は表情を強ばらせた。
   特にジェイクとアネッタの驚きようは、
   他の三人に比べても大きい。


アネッタ:「侵食…されてないですって?」

川崎:「にわかに信じられない話ですがね。
    ブルーグ達の話で聞く限りだと、
    侵食Lv5になっていてもおかしくはないのです。しかし…」

ジェイク:「…しかし?」

川崎:「Lv1どころか、パラサイト反応0。
    一度も接触したことのない人間と、同じ数値だったんですよ。    
    一体どうしてなのか…。」

ブルーグ:「あの時。
      …遺跡で俺がトレントに襲われた時。
      メアリーが光って…。」

イクス:「そうそう!急に光ったかと思ったら、
     パラサイトの肉体が粉砕したんだよ!
     なぁ?弾け飛ぶように。」

ジェイク:「パラサイトが…粉砕?」

アネッタ:「今まで聞いたことのない事例ですね…。」


ナレ:信じられない様子のジェイク。
   博士は小さく唸る。


川崎:「総帥。
   是非、私にこの少女の研究をさせては頂けないでしょうか?
   もしかすると、今後我々の活動に…」

ブルーグ:「(遮る様に)あんな幼い少女を研究材料にするなんて、
      いくらなんでも!」

ジェイク:「(更に遮るように)認める。」

ブルーグ:「おい、ジェイク!!」

ジェイク:「『総帥』と呼べといったはずだぞ?ブルーグ。
      たとえ旧知の仲でも、場を弁えろ。」

ブルーグ:「く…っ」


ナレ:苦々しい表情を浮かべるブルーグ。
   ジェイクはそんなことはお構いなしに、話を続ける。


ジェイク:「生物遺伝子学チームは、彼女の遺伝子データの分析。
      及び、パラサイトに対する謎の攻撃の分析に

      取り掛かるように。」

川崎:「了解です。
    では、少女が目覚めるまで、準備に取り掛かっています。
    ブルーグ、彼女は医務室にいますから、
    様子を見てきてはもらえませんか?」

ブルーグ:「………はい。」


ナレ:ブルーグの態度からして、
   納得出来ていないだろうという事は、誰もが理解していた。
   そんな微妙な雰囲気を払拭しようと、優しい口調になるアネッタ。


アネッタ:「話は以上かしらね。
      今のところ任務はないわ。一時休戦。
      でも、いつパラサイトが出現するかわからないわ。
      各自、トレーニング、体調管理を忘れないようにね。」

イクス:「(伸び)ん…ん~っ!
     ようやく終わったかぁ~?よし、いっちょ飲みに…」

ソクラ:「お前は、『ドクターの論文の手伝い』があるだろう。」

イクス:「うっ…そうだった、そうでした…。
     ソクラァ…ちょ~っと、手伝ってくれたり…」

ソクラ:「(被せる様に)するわけないだろう。」

イクス:「そう…ですよねー!アハ…アハハハハ…ハァ…」

ソクラ:「私はメンテナンスがある。
     …じゃあな。」

イクス:「メンテナンス…?」


ナレ:冷たく言い放ち、その場を後にするソクラ。
   ソクラの言葉の意味が、理解出来ずにいるイクスに、
   博士が声をかける。


川崎:「イクス、君は私についてきてください。」

イクス:「ふぇ~い…。」


ナレ:意気消沈。
   博士と共に、イクスはトボトボと総帥室を去っていった。


ジェイク:「それじゃ、ブルーグ。お前は医務室に。」

ブルーグ:「…ラジャー。」


ナレ:面白くなさそうに返事をすると、
   ブルーグもまた、去っていく。
   残ったのがジェイクとアネッタだけになると、
   アネッタは可笑しそうに訊ねる。


アネッタ:「…反抗期、ですかね。」

ジェイク:「あいつの反抗的な態度は、今に始まった話じゃない。
      ここに来た時だってなぁ…」

アネッタ:「総帥もブルーグも、負けず嫌いですもんね。」

ジェイク:「こっちは甚だ迷惑しているんだ。」

アネッタ:「その割に、楽しそうですね。総帥。」


ナレ:確かに、アネッタの言葉通り。
   ジェイクの口調は、先程までのそれとは違っていた。
   意地を張っているようにも見えるが、
   その口元は緩み、眼差しも柔らかかった。

   一方、医務室へと続く廊下。
   ブルーグの表情は、
   先程までのものとは違った意味での
   『困惑』を浮かべていた。

   というのも、これから向かう医務室に問題があったのだ。


ブルーグ:「…はぁ。」


ナレ:ため息を漏らし、開閉ボタンを押そうと
   指を向けるも、何かが邪魔をする。
   意を決し、ようやく開閉ボタンを押したのは
   それから3分後の事だった。


ブルーグ:「ミランダ…」


ナレ:扉が開くと同時に、目の前に飛び込んできたのは、
   男なら誰しもが喜んでしまいそうな、柔らかな二つの膨らみだった。
   勢いよく衝突し、反動で体が後ろに下がる。


ミランダ:「ブルーグゥ!!
      貴方から会いに来てくれるなんて、珍しいじゃない!」

ブルーグ:「・・・痛い。」


ナレ:金髪の美女に圧倒され、ブルーグは表情を引き攣らせる。
   
   ミランダ・ノースヒルズ。
   ディーパ上層部勤務、軍医。
   恐ろしい程の美貌を持ち、そのプロポーションもまた、
   神が与えた芸術作品のようだと…イクスが称している。
   と、いうのも大げさな話ではなく、
   彼女目当てに、わざと怪我をしてくる輩までいるのだ。
 
   とにかく、ディーパ軍随一のディーバが、
   どういう訳か、猛烈にアタックしているのが
   ブルーグなのである。



ミランダ:「ごめんなさぁい!嬉しくってついつい。
      デートのお誘いかしら?」

ブルーグ:「冗談はやめてくれ!上からの命令だ。
      ここに、青い髪の少女がいるだろう?
      様子を見てくるようにと…。」

ミランダ:「なーんだ、つまんない。
      その子ならベッドに横になってるわ。 
      まだ寝てるわよ。」


ナレ:明らかにつまらなさそうに、
   ミランダは回転椅子に腰をかけると、
   足を組んで、ベッドの方を指し示した。

   カーテンを開け、中の様子を伺うと、
   確かに青髪の少女メアリーが、小さな寝息を立てている。


ブルーグ:「顔色は…良さそうだな。」

ミランダ:「このミランダさんが誘っても、相手にもしてくれないのに。
      その子にはそんな顔見せるのね。」


ナレ:拗ねた素振りを見せるミランダに、
   ブルーグはあくまでペースを崩さずに答える。


ブルーグ:「あくまで命令だからな。」

ミランダ:「じゃ、上から命令されれば私ともデートしてくれるんだ?」

ブルーグ:「はぁ?」

ミランダ:「冗談冗談!」


ナレ:突拍子のない事を言うミランダに、
   思わず乱される。

   ブルーグはあまり、感情を乱される事は好きではない。
   
   何かと振り回してくるこの女を、
   苦手とする理由は、そこにあった。


メアリー:「ん…うぅ…ん…」


ナレ:メアリーがようやく目を覚ます。


ミランダ:「あら、ナイスタイミングねぇ。」

メアリー:「…あれ?…ここ…どこ?」


ナレ:まだ意識が半分夢の中なのか、
   少女は寝ぼけた様子で、部屋をぼんやりと見渡す。


ブルーグ:「覚えてるか?さっきのこと。」

メアリー:「さっき…?」


ナレ:やっと、現実に戻る。


メアリー:「っ?!木のお化け!!」


ブルーグ:「大丈夫だ!
      もう…木のお化けはいない。」

メアリー:「え?…あっ!」


ナレ:ブルーグの優しい口調に、
   少しだけ気分が落ち着いたのか、
   メアリーの表情が変わった。


ブルーグ:「思い出したか。」

メアリー:「(頷いて)…こわ…かった…。」

ブルーグ:「そりゃそうだ。
      どうしてあんなことになったかわからないが、
      あんな化け物に捕まってたんだ。怖くないわけがない。」

メアリー:「…ママ。」


ナレ:メアリーは涙を滲ませるが、
   零さない様に、必死でこらえている。

   黙って様子を見ていたミランダが、
   思い出して訊ねる。


ミランダ:「そういえば、この子の親は?
      連絡先とか聞かなくていいの?」

ブルーグ:「あぁ、そうだな。メアリー。
      お前の家はどこだ?両親はどこにいる?」

メアリー:「…戦争が始まって…ママと二人で逃げてきたの。」

ブルーグ:「戦争?」

ミランダ:「戦争って…今だと、
      フォルテスくらいしか思い浮かばないわ。
      でも、フォルテス人は黒髪のはずよ?
      そもそも、青い髪の人間なんて…」

ブルーグ:「静かにしろ。
      まだ喋ってる。」

ミランダ:「むぅ…。」
      
メアリー:「それで…逃げてたら…えっと…。
      ママとね…戦ってて…。」

ブルーグ:「誰が?」

メアリー:「お姉ちゃん。」

ブルーグ:「お姉ちゃん?メアリーのか?」

メアリー:「うぅん。メアリーのお姉ちゃんじゃないよ。
      メアリー、お姉ちゃんいないもん。」

ブルーグ:「そっか…。」

ミランダ:「その…お姉ちゃんっていうのが、
      貴女のママと戦ってたの?」

メアリー:「うん。
      そしたら、メアリーだけ木のお化けに捕まって…。
      それで…それで…。」


ナレ:襲われた時の事を思い出したのか、
   我慢していた涙が、ポロポロと
   頬を伝って流れた。

   ブルーグは優しく、メアリーの頭を撫でた。


ブルーグ:「意識を取り戻して間もないんだ。
      すまないな、いろいろ聞いて。」

ミランダ:「子供には優しいのねぇ。」

ブルーグ:「ほっとけ。
      メアリー、しばらくは此処にいればいい。
      ちゃんとお母さん、探してやるからな。」

メアリー:「…うん。」


ナレ:一方、研究室。
   片付けが一段落し、ブライアンは、
   博士から託されていた研究データをまとめていた。

   博士に連れられ、イクスが研究室の中へとやってくると、
   ブライアンは親の仇でも見るような目で、イクスを睨む。
   

ブライアン:「来ましたね!遺跡破壊の張本人!」

イクス:「ゲッ…ブライアン。相変わらず口うるせぇ野郎だな。」

ブライアン:「その様子だと、刑に処する事になったようですね。
       いやぁ、よかった!あのまま逃げられたら

       僕たちの苦労が…。」


ナレ:ブライアンは嬉しそうに、そして意地が悪そうにニヤつく。


川崎:「ブライアン。君にも手伝ってもらいますからね?
    私の論文は毎回200枚と決めてるので。」

ブライアン:「そうですよ、イクスさん。
       先生の論文の手伝いは、いやぁ、それは大変…え?
       せ、先生…僕も…先生の論文の手伝いをですか?!」


ナレ:予想外の博士の言葉に、ブライアンは動揺を隠せない。


川崎:「当然です。
    現場監督は君なのですよ?
    責任を取るのはおかしな事ではありませんよね?」

ブライアン:「え…でも…ぼっ…ぼ…ハァ…。
       …そう…です…ね。」

イクス:「よかったぁ、俺一人じゃなくて…。」

川崎:「さて、論文作りは後にして…。
    ブライアン、先ほどお願いしていた事ですが…。」

ブライアン:「えぇ、終わってますよ。
       これから確認するところです。」

川崎:「そうですか。ありがとうございます。」

イクス:「んなぁ?」

ブライアン:「イクスさんに理解出来るかどうかわかりませんが、
       …ご覧になられますか?」

イクス:「だからさぁ~、最初から決めつけるのはやめてくれないかぃ?」


ナレ:明らかにイクスを見下したような物言いで、
   ブライアンは何かが書かれた紙を、ヒラヒラと揺らす。
   騒がしい二人そっちのけ、博士は神妙な面持ちで
   渡された紙に目を通している。   


川崎:「ふむ…。
    これは…本当ですか?」

ブライアン:「えぇ、間違いありません。
       僕もおかしいと思って、
       別の人間のデータとも比較しましたが…。」

イクス:「え?なになに?」


ナレ:興味津々といった様子で、
   イクスは二人のやりとりに首を突っ込む。
   イクスの前に、難しい単語や、 
   数値の書かれた紙を差し出される。


イクス:「な…っ?!なん…だと…?!」

ブライアン:「イクスさん、わかるんですか?」


ナレ:衝撃を受けたようなイクスの表情に、
   ブライアンは意外そうに訊ねる。

   が。


イクス:「…さっぱりわからん!!てか、何語だこれ!」

ブライアン:「(ため息)…やっぱり。」


ナレ:一瞬でも、イクスが理解したと
   思ってしまった自分を、
   恥ずかしく感じるブライアンであった。


川崎:「あの少女、メアリーの遺伝子情報ですよ。
    試しにブライアン、別の人間のデータを。」

ブライアン:「はい、これです。」


ナレ:ブライアンは自分のデスクから、
   新たな資料を差し出す。
   博士はそれを受け取ると、両者を比較するように
   机に並べながら、説明する。


川崎:「これが通常の人間の遺伝子データの一部。
    そしてこっちが、少女の。」


ナレ:見比べるが、イクスには違いがわからない。


イクス:「これの…どこがおかしいんだ?」

ブライアン:「…ここまで頭が弱いと泣けてきますよ。」

イクス:「っさいわ!」

川崎:「通常ですとね、ここと…ここ。
    この部分だけ違うデータになるはずなんです。
    人間の遺伝子というのは、この部分を除いて、
    みんな一緒ですから。」

イクス:「ほーうほうほうほう。」

ブライアン:「わかりますよね?
       この二つのデータが全く違うという事が。」

イクス:「ふむふむ。
     …それで?」

ブライアン:「…先生。
       僕、こんな人と協力しなきゃいけないんですか?
       先行き不安です。」


ナレ:あっけらかんと答えるイクスに、
   やり場のない感情を抱くブライアン。


川崎:「まぁまぁ…。
    これが意味することはですね。
    あの少女は、我々『人間』とは
    違う生き物だということなのです。」

イクス:「ふーん、そっかぁ~。
     へ~、人間じゃないんだぁ~…ん?
     って、えぇっ!?」

ブライアン:「貴方、軍人やめたらリアクション芸人になれますよ…。」


ナレ:端的に説明され、ようやく理解する。
   イクスは信じられないといった様子で、
   博士に訊ねた。


イクス:「に、人間じゃないって、なんなんだよぉ!
     どう見ても人間の女の子じゃないか。」

川崎:「そうなんですよねぇ…。
    不思議なことがあるものですね。」

ブライアン:「ちなみに、パラサイトの細胞と比較しても、
       別物であることが分かりました。」

イクス:「つまりなんだぁ。
     あの子はパラサイトでも、人間でもないってことか。   
     …んじゃ、なんだ?」

ブライアン:「ムッ!
       だから…それを今から調べるんです!」

川崎:「ブライアン、落ち着きなさい。」


ナレ:全く緊張感のないイクスに痺れを切らし、
   ブライアンがムキになって答える。

   ふと、研究室の扉が開く。

   医務室からやってきたブルーグであった。    


イクス:「っよ!相棒。」

ブルーグ:「ん?イクス。いたのか。」

イクス:「(極力真似して)『いたのか。』じゃねーよ!
     おっさ…川崎博士の手伝いするからぁ~って
     一緒に出てったろ?」

ブルーグ:「そう言えばそうだったな。
      あぁ、先生。メアリーが意識を戻しました。」

川崎:「報告ありがとうございます。
    …おや?」


ナレ:ふと、博士はブルーグの顔を見て首を傾げる。


ブルーグ:「はい?」

川崎:「なんだか、顔色が優れませんねぇ。」

ブルーグ:「え?特に不調は…。」

川崎:「私の思い過しでしょうか。
    まぁ、何かあったときは私の精密検査でも、
    ミランダの検診でも受けることですね。」


ナレ:ブルーグは苦笑いを浮かべた。


ブルーグ:「…その時は川崎先生にお願いします。
      それじゃ、俺はこれで…」

川崎:「あぁ、ブルーグ。もうひとつ。」

ブルーグ:「なんです?」

川崎:「メアリーのことで、少しお話伺えますか?
    こちらからも報告があります。」

ブルーグ:「…はぁ。」


ナレ:その頃、食堂のデッキ。
   ディーパの夜景を見つめながら、
   ミランダは誰かと携帯を通じ、会話をしている。
   相手が誰なのか、窺い知る事は出来ない。
 

ミランダ:「…話は一致してる。
      勿論、わかっている内容のみだけどね。
      調べてみる価値はあるわ。
      …やってみる。…えぇ、任せておいて。」


ナレ:妖艶な微笑みを浮かべ、電話を切る。
   吹き抜ける柔らかな風が、悪戯に彼女のブロンドを揺らした。


ミランダ:「ブルーグ・ナハトイェガー…か。
      …本当に、よく似てるわ。」

 


【To Be Continued...】